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*ニンジャスレイヤー感想ブロゴだ*

【感想】デイドリーム・ネイション

断続的に1ヶ月以上続いたエピソードが完結しました。最初の方の記憶が朧になっていたので、ひととおり読み返したうえでの感想を書いておきます。例によってネタバレありなので、未読の方は先にぜひ本編をどうぞ。

 「デイドリーム・ネイション」 - ニンジャスレイヤー Wiki*

キョートから訪れた「部外者」であるクロマ=サンというモータルの視点を通して、10月10日以後のネオサイタマを取り巻く状況がつぶさに描写されました。一見平時を取り繕いながらも、コトダマ空間認識者に対する迫害、ローニン・リーグというレジスタンスの存在、そしてニンジャスレイヤーとアガメムノンの今。重要な情報がいくつもありました。

前半で印象的だったのは、おそらく現代日本へのいろいろな風刺が込められたアケガ収容所内の映画鑑賞室の様子、そしてアイザワのタフさと「心の王国」。クロマがあのキョートでのランペイジの暴虐の直接的な被害者であり、ニンジャスレイヤーの戦いぶりを目撃したことがまさに彼にとっての「心の王国」となり、苦難を耐え抜く力とするというのは、これはまさしくニンジャスレイヤーのミーミーの継承ですよね。「怒」ボタン!そういえば、連載中にちょうどTantou氏によるランペイジ紹介記事がブログに掲載されたのも、狙いすましたタイミングだなあと思いました。

デプレッサーの前に現れるニンジャスレイヤーの登場シーン。クロマの記憶の中の幻影と重ねる演出方法は、ここ最近のエントリーシーンのなかでも屈指のカッコよさでした(アルペンスキーのことは一旦忘れよう)。デプレッサーは本編中でも描写されているとおり、そのジツの効果からアケガ・ターミナルの監視にはうってつけの人材だったはずなのですが、このタイミングでニンジャスレイヤーが介入してくることは全くの想定外だったようで…。現在のアガメムノンが持つ対ニンジャスレイヤー能力(雷撃)の件は、広くアマクダリ内に共有されている節がありますね。

中盤のクライマックスは、何といってもストーンコールド戦。そう、「グラウンド・ゼロ、デス・ヴァレイ・オブ・センジン」のその後が描かれたのでした。彼らトクシュブタイはセンジン戦で大きな痛手を受け、そしてまたストーンコールド自身もカースシンガーによる何らかの重大な効果のある「ノロイ」を受けており、古参のヘヴィレインとともに2人きりで鎮圧ミッションにあたるわけですが、そこにデプレッサーを殺したニンジャスレイヤーが立ちはだかる。
ストーンコールドのカラテ強者ぶりは、目を見張るものがありました。スパルタカスを倒したという事前情報を知ったうえで、なお少しも怯まない様子はさすがでした…が、スパルタカス戦では封じていたナラクの力の開放の前には及ばなかった。一方で、ニンジャスレイヤーもこの時点で相当に切迫した状況にあり、勝ちを急いでいる様子が描かれています。

因縁深いニンジャスレイヤーを後にして、まんまと施設内部に突入したヘヴィレインの前に現れたのは、なんとレッドハッグ。「フェアウェル・マイ・シャドウ」での活躍以降は時系列上は初めての登場で、泥酔回の汚名返上(?)、セリフもカラテもかなりカッコイイところを見せてくれました。「いじらしいのさ。義侠心が疼くんだよ」って最高じゃないですか?姐さーん! f:id:epxstudio:20160304140136p:plain
義に篤く情にもろい三十路の女剣士のイラストです。

そして、戦うモータルのハッカーたち。物理肉体に致命傷を受けたアイザワをタイピングによって繋ぎ止めるタネコ。そして一度はログアウトしたものの、最後にアイザワへの思いを吐露したタネコは再びコトダマ空間へダイブする…ここは、タネコを救うためにヤバレカバレで単身アケガ収容所へ飛び込んだアイザワと鏡写しになっていて、因縁の直接の原因となった事件についての具体的な描写はされなかったものの、2人の間の強い心の繋がりを思わせます。

さて、コトダマ空間認識者への対策としてネットワーク的にスタンドアローン状況にあったアケガ収容所も、Y200工兵による物理接続によってアルゴスの手に落ちる。しかしこのことによってか、何らかの電子存在(ナンシー=サン?)に導かれたアイザワとタネコは、意外にも「ショック・トゥ・ザ・システム」以来行方不明だったエシオの元へと。これがどう出るかは今後のエピソードを待つしかありませんが、物理肉体を失いソウルワイヤード存在となった彼らと、似たような状況に追い込まれているはずのガンドー=サンがクロスオーバーするかどうかは、対アマクダリ戦の大勢に影響するかどうかも含めて大いに気になるところです。

明らかにされたアガメムノンの「雷撃」の正体。それはカスミガセキ一帯の電力を停止し、ニンジャスレイヤーただ一点を狙ってピンポイント連続攻撃を行うという力技でした。フジキドがスパルタカス戦後に何らかの痛い目に遭わされているくだりも示唆され、よほど警戒している様子が伺われる一方で、おそらくこの攻撃はネオサイタマ市内でのみ有効であることから、明らかに彼はこの地を離れずに反撃のタイミング(鷲の翼が開く時)を伺っている。エピソード冒頭の会話の応酬は、やはりフジキドとナンシーのブリーフィングなのかな。

フジキドらによるアマクダリ攻略作戦の全貌は依然として伏せられたまま。雷撃を受けたり、潜伏場所がアルゴス側に露見するリスクを冒してもなお地上に出てきて、アケガ収容者たち(=多数のコトダマ空間認識者)とローニン・リーグを手助けした意味はあったのでしょうか。仮にニンジャスレイヤーが現れなければ、収容者もローニンも全滅、ヨージンボーであるレッドハッグとフェイタルもおそらくトクシュブタイの介入により絶望的な戦いを強いられていたはず。ではそもそもローニンが決起しなければ…?いや、ネオサイタマのモータルは、牙を抜かれじわじわと自我を擦り減らされるだけの人々ばかりではなかったということでしょう。ここにニンジャスレイヤー第3部のメインテーマが読み取れるような気がします。

少なくともクロマは変わった。まったくの不運で、ハッカーですらないにも関わらず巻き込まれてしまったクロマ。実際アイザワと出会った当初の彼は、収容所を脱したらすぐにキョートへ帰ると明言していました。しかし彼はもはや傍観者ではなくなり、チカマツの志を受け継いで、ニンジャによる理不尽な支配へ抗うモータルの一人となった。彼らモータルの戦いが、ニンジャスレイヤーらの戦いとどうリンクしていくのか、今後のエピソードを楽しみにしたいと思います。

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Twitterにアップしたものとは口元の表情が違うバージョン。レッドハッグ=サンはボサボサ長髪とかレザージャケットのおかげであまり目立たないけど、本来の体の線の細さがウェスト回りに出るといいかなと思って描きました。