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【二次創作感想】ショーゴー×ヤモトアンソロジー『章恋花』

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ニンジャスレイヤー二次創作、通称ウスイホンの感想なども少しずつ書いていこうと思います。まずは去年のC89発行、掲題のアンソロジー本『章恋花(ショウレンカ)』。本作は、ショーゴー(スーサイド)とヤモト・コキをテーマにした小説とマンガ作品による本文58ページのアンソロジー本です。サークル「Gフラクタル」の10区さんの企画によるもので、冬コミに続いてコミックシティ大阪での頒布を経て、現在は下記の公式サイトでの通信販売が始まっています。

ショゴヤモアンソロジー企画

本作では、ご縁あって私もマンガで2ページ参加させていただいています。何人かの方から、参加していたことが意外というふうに言っていただいたり。ショゴヤモ好きですよ!いずれ、少し長めの二次創作でじっくり掘り下げてみたいと思うくらいには。

彼らって、単に年頃の男女というだけではなくて、ある意味で血よりも濃い宿命で結ばれた複雑な関係にある点がおもしろいと思います。何といっても『ラスト・ガール・スタンディング』で語られる関係性ですよね。ショーゴーは、モータルとしてのヤモトの人生を終わらせてしまった存在でもあるし、そのことで負い目を感じている。一方でヤモトは彼女なりの事情で後戻りできない状況にあり、過去と決別して前に進むことができたのは、ショーゴーとの出会いがきっかけでもある。それが、2部、3部を通して成長していくなかで、それぞれにに守るべき人々ができて、『ニチョーム・ウォー……ビギニング』および『ニチョーム・ウォー』に至り、再び目的を共にして戦うようになる。

けれど、そのわりには彼らの会話シーンは本編ではあまりに少ない…というか、ニンジャスレイヤーにフォーカスした話を語るうえで、ボンモーは敢えて余白を持たせている節すらある。ならば補完したくなるのは二次創作の常というもので、その結果として生まれたのがこういう幸せな本です。誰もが読みたかったショゴヤモが詰まっているのです。

実際、贔屓目なしにすごく完成度の高いアンソロジー本だと思います。カップリング重点だからといって敬遠される方がいたら、ぜひ機会をみて中の作品を読んでみてほしい。つまりその、どの作品においても「踏み込まない・踏み込めない」2人の微妙な関係性が尊重されていて、いずれの作家さんも深く原作を読み込んでおられるのが分かるのです。まさにラブとリスペクトですよこれは。

以下、それぞれの収録作品について、短くメモ的にではありますが、感想を残しておこうと思います。

あげせんさん(マンガ)「ショゴヤモ初デート」

デートのワンシーンを切り取ったカワイイな作品!とにかく5ページと6ページの2人のリアクションがかわいすぎて、ここだけ何度も行ったり来たりしてしまいます。ショーゴーは無意識にこういう仕草をしてしまうのかも。基本的にこの2人、どっちも天然というか作為がなさそうなところがいいですよね。そしてまたちょっかい出すでもなく、遠巻きに見守るメンター2人の気持ちがよく分かります。

秋月翼さん(マンガ)「となりのアフロ」

アフロヘアーはショーゴーのアイデンティティを形成する要素のひとつですが、そこを気に入ってもらえたら嬉しいだろうなあ。ショーゴーがいなくなって不安になるところ、再び出会って安心するところのヤモトの表情の変化がカワイイです。サツバツの日々を送るなか、ヤモッチャンはアフロのフワフワのなかに、ついに安らぎを見出したんでしょうね。

カニクレーンさん(小説)「フー・チェイスド・チェイシング・フー・アンド」

ショーゴーの魅力を語るのにこういう視点もあったかと気づかされました。というかショゴヤモが出会うシーンを描かずにショゴヤモを描くというワザマエ!本編さながらのサツバツとしたアトモスフィアのなかで、不器用ながらも彼なりの奥ゆかしい優しさが表現されています。ネオサイタマで生きるモータルらしい、ウメ=サンのタフさが救い。銭湯を舞台にしたエピソードは原作にもまだないので(ロブスターを除けば)、とっても新鮮でした。

10区さん(小説)「恋せよ青少年」

ショーゴー、あの写真!あれ持ってたんだーというのがまず嬉しくてテンション上がります。ラスガのときにソニックブームに見せられた、ヤモトの手配写真。しかもとても大事にしていたという描写や、それをヤモッチャンに見透かされたときの反応がいかにも彼らしくて。自分のなかで認めようとしなかった感情を認めたときの心の変化が、繊細なタッチで綴られています。

米沢ぴうさん(マンガ)「しあわせの味」

絵馴染でのひととき、そしてヤモッチャンの手料理。シマナガシの面々は自炊しなさそうだし、ヤモトはザクロ=サンの下で料理のレパートリー増えてそうだから、この展開は必然ですね!おそらく彼女にはセリフ以上の他意はないのかもしれないけど、ショーゴーは内心かなりドキドキしていそうなところがいいですね。

したいさん(小説)「ニチョーム・ウォー……インターミッション

ビギニングとウォーの2つのエピソードのあいだ、束の間の休息をとる2人の様子を原作のテンションに忠実に描いた力作です。ソウル・アブソープションにより夢の中で交錯する記憶が分かちがたい運命の表れであるなら、それを受け入れて前に進もう、という区切りのイベントが描かれます。きっと、こういうやりとりがあったんだろうなあ。途中、行きがかり上ついかたくなに強がってしまうヤモッチャンがすごくいいです。

狩谷茜さん(マンガ)「プレゼント」

ショゴヤモマンガといえば、過去の同人誌を踏まえても狩谷さんの作品は外せません。お店の人相手だとか人前では平静を装い頼もしくリードするショーゴーが、2人きりになると、途端に天然小悪魔なヤモトに翻弄されまくる!どこまで計算なのか分からないカワイイにそわそわします。でもヤモッチャンも、ショーゴーの何気ない一言にドキドキさせられているし、ホントいいバランスなんですよね。

麻花さん(マンガ)「アクション・スピーク・ラウダー・ザン・ワーズ」

いつになく積極的なヤモト!冒頭のソファーの端に追い詰められたショーゴーが、彼の心理状態を表しているようで。けどいつかは心を決めなきゃいけないんだろうなあ。そのときにショーゴーは何を言うのか、それともここでのようにやっぱりうまく言い表せなくて行動で示すのか、結局はヤモッチャンにとってもどちらでも構わないのかも。

貴縞さん(小説)「飛行夢(そらとぶゆめ)」

とある夜、帰り道を共にする2人の様子を描いたエピソード。ショーゴーにとって、たとえ短くて他愛のない会話であったとしても、ヤモトとの時間は、ひととき悪夢を忘れさせる唯一の癒しの手段なのでした。彼をそれとなく導くフィルギアも、ショーゴーが癒しを得ることよってシマナガシが丸く収まることを見越しているのかな。

R-9(マンガ)「アサリ=サンのニチョーム怪談?」

アサリ=サンには悪いことをしました…。彼女は彼女で幸せになってほしいです。でもなんかこう、ショゴヤモデートを第三者が見届ける的なネタが他にもあって安心しました。彼らのことは暖かく見守りたいんですよおー、ほんと。

ぴんこさん(マンガ)「瓦屋根の上でショゴヤモちゃん」

まるで子供のように無邪気なヤモッチャン、と思いきや…!でも原作のビギニングでの瓦屋根のシーンでも妙に積極的だったし、ショーゴーに変に気を使わせないように考えたうえでの、彼女なりに割り切った優しい行動なのかもしれませんね、こういうの。それにしても、ころころ変わるショーゴーのカワイイな表情にぴんこさんのカラテを感じます。

岬さん(小説)「風の向こうの桜の梢」

淡々と、理知的で抑制の効いた文体で語られるショーゴーの苦悩と決意。ソニックブームから生きる術としてヤクザのミーミーを受け継ぐと同時に、罪深いニンジャネームを与えられたことによる苦悩は、ヤモトとの関係性によってしか和らげることができないのですね。重い宿命を自覚しつつも、新しい決意の言葉により自らかすかな希望を見出すラストは、アンソロジーの最後に相応しい爽やかな読後感を与えてくれました。