R-9のおでかけ修行ハウス改善

*ニンジャスレイヤー感想ブロゴだ*

【感想】アンダーワールド・レフュージ

ロンゲスト後のフジキドサイドの面々の動向が描かれた、短いながらも今後の重要な布石となりそうなエピソードでした。彼らがどこに潜伏しているのかと思ったら、なるほど、ツキジ・ダンジョンだったのですね。

冒頭から、ナボリとモナコのカワイイなやりとりにほんわかしていたら、ユンコちゃんですよ。ゴウトやマッチ、リケ=サンなどのいい味出してるモータルのたくましい健在ぶりが描写され、そして昏睡状態のナンシー=サンとそれを見守る魔女ことホリイ=サン。ここで、ナンシーの状態から、このエピソードが「アルパインサンクチュアリ」後、「デイドリーム・ネイション」前の時系列の話であることが初めて明かされます。つまり複数の視点において、欠けていたパズルのピースを埋めるエピソードだったわけです。第2部クライマックスのいくつかのエピソードのように、これは初めてのニンジャヘッズがいきなりこの回だけ読んでもあまり良さは伝わらないかも。

前半パートでは、ニチョームの詳しい現況が不明であること、それに関連して「信じがたい噂」があるということも明かされました。ニチョームにはおそらく、ヤモトらニチョーム勢、シマナガシ、サヴァジョがいると予想されますが(シルバーキーはどうだろう)、噂ってなんでしょうね…気になる。

さて、地下のモータルらを守るニンジャとして誰が同行しているのかと思ったら、なんとジェノサイドだったのでした。ちょうど同日に連載された余湖・田畑先生版のコミカライズ「ゲイシャ・カラテ・シンカンセン・アンド・ヘル」と重なったこともあり、TLではジェノサイド人気が爆発。特に、「ウィアード~」で縁の深いホリイ=サンを守る形で登場したイケメン主人公ムーヴが熱かった。

なお、この時点ではニンジャスレイヤーが不在であること、そして傭兵2人、おそらくブラックヘイズとフェイタルもいたものの、「別作戦」で同じく不在であることにも触れられていました(別作戦ってなんだ)。

中盤で提示されるユンコとジェノサイドの対比は、これまで私はまったく想像したことがなくて、この手があったかと思いました。ヘンな表現だけど、さすがは原作者だなあ…と。確かに、外見的には人ならざるものに変わり果ててしまった己を、「俺は~」「私は~」と強い自我を拠り所に必死でつなぎとめるさまが、よく似ているんですよね。それを作中で傍観者の視点から見出すのがホリイ=サンというのも良かった。「とんかつとDJって同じなのか…!?」みたいな心境だったのかもしれません(違うと思う)。

そもそもツキジ・ダンジョンこそは、本作においては「マグロ」と「ゾンビー」の象徴なわけですよ。ユンコとジェノサイドの共通点を描くにあたって、これ以上おあつらえ向きの舞台はない…いやあ、よくできているなあ。

そして、ユンコの覚醒!彼女がナンシーとハッカー修行を積む中で、どの時点でセンセイに追いつくのか、あるいは追いつけずに諦めるのか…という点には以前から注目していましたが、ここでこんなとは。ユンコは、性格的にはナンシーに似ているとは言えないし、ハッカー適性があるようにも思えなかっただけに、正直、ナンシーと同じ方法ではあの境地にたどり着くことはできないと思っていました。例えば「フェアウェル~」のときのような、ひたすら駆け続けたうえでのハック&轢殺、みたいな、テックの肉体を駆使したカラテとハッキングのハイブリッドな奇策のようなものが、彼女らしい戦いかたなのではないかと。

しかし、ここで見せたのはあくまでも正攻法の、処理能力を限界まで駆使したハッキングだったのでした。なんだかんだで、ちゃんと修行と経験を積んでいたんだなあというのが。そしてまた、排熱のために軽装になるという演出がいかにも絵になるというか、変身バンクのテイストがありましたね。ハッキングするときの体勢がザゼンというのもクール。

そんな感じで、ジェノサイドとユンコの奮闘が並行して描かれつつ、そこに現れたのが久々登場のトリダくんことブルーブラッド。ここから、2013年8月連載の「ホワット・ア・ホリブル・ナイト・トゥ・ハヴ・ア・カラテ」以降不明だったINWの動向が明らかにされました。リー先生!フブキ=サン…もといフォーティーナイン!

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いやーフブリー素晴らしいです。彼らってよく考えてみたら、キャラが強烈なのであれですけども、シチュエーションだけ切り出すととっても古典的なラブストーリーなんですよね。自身の最高傑作にも関わらず、あくまでフォーティーナインではなくフブキくんと呼ぶリー先生、そのリー先生のために死よりも重い選択をしたフブキ=サン。彼女の一途さすごいですよ(リー先生のどこがそんなにいいのかというのはこの際置いといて)。

で、クラーケン能力を手に入れたことでさらに魅力がアップしてしまった感じですね。

それにしても、リー先生とナンシー=サンの取引は意外でした。はじめ、まんまとアマクダリのパペットマスター=サンの露骨なサンシタムーヴにミスリードされてしまったくらい。ボンド&モーゼズはこういうさりげなーい叙述トリックが上手いなと思います。

フジキドは、スガワラノ老人の件もあるしリー先生のことは決して許していないでしょう(そうであってほしい)。しかし、ニンジャじゃなく一介のモータルであるリー先生を前にして、言ってみれば代理の復讐行為に及ぶかというと、難しい判断なのかもしれません。
ましてや、ジェノサイドとの契約履行の件があるとはいえ、ツキジに根を張るフォーティーナインがその気になればいつでも避難者たちを殺せるという状況下にあって、今回の取引の件は、フジキドにとっても背に腹は代えられないということなのかなあ。手薄になることを承知のうえでこの場を離れている以上、渋々ながらも了承したのだと想像しています。

f:id:epxstudio:20160228014329p:plain「ツキジ・ダンジョンへようこそ」…フブキ=サンは初めて描いたけど楽しかったです。 

Twitterでは、「いろんなカップルがいちゃしている回」と雑にまとめてしまいましたが、なんというかまあ、エピソードの導入がナボリとモナコのシーケンスから始まったのもここまで来ると納得。ニンジャスレイヤーの戦いを支える、様々なキャラクターたちの魅力が散りばめられた短編であり、なおかつ今後もユンコ関連の二次創作に取り組む予定の自分にとっては、重要なエピソードとなったのでした。もちろん、ジェノサイドやINWの魅力を再発見できたのも大きな収穫!

「アンダーワールド・レフュージ」 - ニンジャスレイヤー Wiki*