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【感想】アンエクスペクテッド・ゲスト

Twitter連載版『アンエクスペクテッド・ゲスト』の感想です。

「アンエクスペクテッド・ゲスト」 - ニンジャスレイヤー Wiki*

連日の深夜更新

いやー楽しかったですね!昨晩…というか今朝がた4時近くまで更新を追いかけていて、片時も目を離せませんでした。またしてもリアルタイム更新の醍醐味を味わった気分です。これはほんと、書籍を読む楽しみとはまったく違う体験ですよね。しばしば引き合いに出されるように、昔ながらの紙芝居屋さん、あるいは舞台演芸のようなライブ感に近いもので、翌日に仕事を控えた日曜日の深夜であっても、ついつい我を忘れて張り付いてしまいがちです。

それにしても、#9まで続いた長編エピソードとはいえ、途中で翻訳チームが病魔に襲われるなどのアクシデントがあったために、完結には2ヶ月以上を要しました。長い。長かった。途中、もう手が付けられないほど話がキャラも伏線も広がってしまい、どう収拾つけるのかと心配になるくらいでしたが、そこはさすが…終盤、怒涛の連夜更新でガーッと回収して行きました。嵐が過ぎ去った後は、ほとんどタロのように呆然とするしかない感じで。

ただ、先ほど最初からTogetterで通して読んでみたところ、連載時は冗長でもどかしく感じていたエピソード前半のくだりも、実は全然無駄な描写がないことがよく分かりました。パニック映画ならではの「焦らし」はありつつも、提示したい要素が凝縮されていてスピード感がある。これはおそらく上記の連載期間の長さによるもので、通して読んでみて大きく印象が変わりました。

ツカミが良かった

というかですね、だいぶ前なので忘れかけていましたが、冒頭のオキナワと思わせておいて塀の中という導入が良かった。ああいうタイプの叙述トリック(というのかな?)は忍殺では意外と使われないパターンではあるので、ここでまず引き込まれました。そもそもこれって、『デッド・バレット・アレステッド・ブッダ』の結末でラッキー・ジェイクの行く末が濁されていたからこその仕掛けなんですよね。

 でいて、ヤマヒロ組、49課のデッカーニンジャたち&ノボセ老、コーゾ、そして今回のMVPたるカブセ医師…続々と投入されるキャラクターたち、そしてモンスターパニック映画の定石を踏まえたカンゼンタイの演出に、わくわくしました。そういえば、まだちゃんと全部は観ていないんだけど、ギレルモ・デル・トロ監督の連続ドラマシリーズ『ストレイン』の第1話を同じ時期に観たこともあって、ベタなシーンでいくつか被っているところがあって面白かったのを思い出しました。

本エピソードが特殊だったのは、作中時系列が完全に明らかになっていることで、提示されていない上記以外のキャラクターの介入(例えばニンジャスレイヤーらフジキド・ケンジ・グループ、あるいはバイオニンジャ制御のカギとなるサブジュゲイター、キュアなどの)オプションが初めから封じられていたことです。このことで、まあ最終的にはどうにかスガモ単独でケリはつけるんだろうなという予感はありつつも、「どのようにして」の部分の予想がまったく立たなかった。だからこその楽しみがありました。

狂気と正気の狭間で

 今回、特に重点されていたのが「狂気」の描写ではないかと思います。もともと、ニンジャスレイヤー自身が度々「狂人」と表現されることもあって、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』を引き合いに出すまでもなくヘッズには馴染みの深いエッセンスではありますが、ここまで狂人に墜ちる瞬間、あるいは狂人から聖人に転化する瞬間の境目の部分に迫ったエピソードは少なかったかもしれません。

「人は一瞬で男になれる。変われるンだ」というのは『アトロシティ・イン・ネオサイタマシティ』でのヤマヒロ=サンの有名なセリフですが、本エピソード自体がそのコトダマのリフレインでもありました。この境目は本当に薄皮一枚、あってないような違いであって、自分の行い次第で良いようにも悪いようにも「超えられる」のです。その大きな対比が、ヤマヒロとカブセ医師でした。

ヤマヒロの眼前に度々現れた天狗の影…おかしくも恐ろしかったですね。正直なところ、私はこのエピソードではヤクザ天狗は「来ない」ものと思い込んでいました。そもそも、『アーバン・レジェンド・アブナイ』であれだけチラつかせておきながら出さなかったわけで、更にはヤマヒロの精神状態の危うさ…そしてまた、来たところでどうなるのという状況ですよ。まさかですよ。

カブセ=サンがヘリを飛び降りるシーンも、まったく予期できませんでした。なにしろ登場シーンからしてアレだったので、ジェイクに匹敵する強いモブかなあと思っていたら、みるみるうちに立ち位置が変わっていって、最後は高潔な医師として生きる道(本人は「三千万より医師の名誉に目がくらんだクソ野郎」と卑下していましたが、ここもたまらなく良いですよね!)を選んだのでした。

でも、この二人のどちらにも共通するのは、自己犠牲の精神です。ヘリを降りる選択をしたカブセ医師は言うまでもなく、ヤマヒロもまた、ヤクザ天狗を呼んだ時点で自分に報酬の支払い能力がないことを分かっており、債務不履行の代償が何であるかを心得ているのです。尊いことじゃないですか。

49課の大暴れ

49課の三忍も右に左に大活躍でした。この話は例の前夜のナンシー=サンとの一件の後日談でもあり、あれだけ窮地に追いやられたデッドエンド、タフガイそしてスポイラーくんがカイジュウ相手に大暴れしている様は、ヒヤヒヤさせられつつもとっても爽快でした。

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 デッドエンドを救おうと必死になるスポイラーくん、良かったね…。

そして、ノボセ=サンのあのシーンですよ。私はもう完全にダメだと思いました。要はスポイラーがデッドエンドを諦めてタフガイの支援に回っていれば、間に合っていたはずのタイミングでしょう(ボンモーはまたああいう演出をする~)。
実際のところ、デッドエンド=サンはZBRで復活したあと、胸筋をぐいぐい押してたカブセとヤマヒロをぶん殴るでもなくすっ飛んでいったんでしょうね。さすがにニンジャだよ。

ヨロシサンはどうなっちゃうの

 コーゾ=サンの歪な愛社精神は決して褒められたものではないものの、アンコクトンににべもなく呑み込まてしまったミコシ=サンよりは、よほど救いのある死に様でした。「サヨナラ!」が2つ重なっていたのは印象的でしたね。

だけども、ヨロシサン製薬は今後どうなっちゃうんでしょうね。バイオニンジャの粋を集めたカンゼンタイがあんなことになってしまって、まあ全てを投げ打って失敗したオムラまではいかなくても、経営上のダメージは少なくないんじゃないかなあ…。ニチョーム戦に投じた透明クローンヤクザやクローンヤクザ脳兵器も、ニューロン攻撃の前には無力ということが露呈してしまったし。キュア=サンのことも…。
でも、ヨロシサンに関しては先日のブロゴ記事(ヨロシサン製薬バイオテック第2営業部を退職しました - ニンジャスレイヤー公式ファンサイト:ネオサイタマ電脳IRC空間)でも示唆されたように、血族で固められたトップの動きが謎めいている。どれくらいのリソースがあるのかも。もしかすると、カンゼンタイ計画のような方向性も別に本社の総意ではなく、大した痛手ではないのかもしれません。

天狗の国へ

それにつけても、満を持してのヤクザ天狗エピソードがこういう形で実現して、改めて1年2年スパンでのボンモーの構成力にひれ伏しています。一番面白いやつを、一番面白いときに一番面白い方法でぶつけてくるんですよ彼らは…!でまた、この話はロンゲストの一連のお話のフィナーレの花火でもあり、フジキドの活躍を表とすると舞台裏の話でもあって、念入りなファンサービスだなあと思うのでした。めちゃくちゃ楽しんだよ!

以上、『アンエクスペクテッド・ゲスト』の感想でした。