「HMC3」向けDJセットのプレイリストと全曲解説
11月19日に秋葉原MOGRAで開催されたニンジャヘッズによるクラブイベント「HMC3」での、自分のDJの内容などについて詳しく書いていきます。全12曲、「ニンジャスレイヤー フロムアニメイシヨン」本編やオーディオドラマからの楽曲やセリフなどの音源も、これ以上無理というくらいギュウギュウに詰め込んでいるので、そのあたりの解説も。
そもそも私はDJなら16年くらい、シンセとかでテクノを作り始めてからだと20年近く続けてきた音楽活動の趣味が、全然別口で始めた「ニンジャスレイヤー」の二次創作活動に生かせる機会があるとは思ってもみなかったので、今回は最初にDJのお話をいただいたときからだいぶ意気込んでいました。テクノ愛とニンジャ愛を、誰にも気兼ねせずに全力で表現できるチャンスはここしかないぞ!みたいな。
イベント終了3日後の11月22日、イベント時のセットとまったく同じ内容で、自宅スタジオでレコーディングを行いました。その45分の完全版の音源を、フリーダウンロードで公開します。ストリーミング再生では以下のSoundCloudから、mp3ファイルの直接ダウンロードはこちらから(105MB)。
楽曲解説のようなもの
01. Namuami-Vamp
ネオサイタマ・イントロダクション― Player ‘Revamp’
1曲目は分かりやすーいフレーズの踊れる曲がいいなと思っていたので、すぐにOutlanderの"Vamp"みたいなアンセムを連想しました。ここでは、00年前後にサンプリング主体のパーカッシブなハードミニマルを連発して一時代を築いたPlayerによるリミックスのほうを使っています。
イントロはどんな感じで始めようか悩んだのですが、シヨンの「ワン・ミニット・ビフォア・ザ・タヌキ」の冒頭のコトダマ茶室会議のBGMが大好きで、あれをサンプリングしたものをループにしています。あの曲だけ手持ちのサントラに収録されていないんだけど、もしかしたらまだ買っていない『コンピレイシヨン 殺』に入っているのかな…。
ネオサイタマのマッポー感が伝わればいいなと思って、泥酔サラリマンがボコられるシーンのセリフを入れてみたら、妙に曲の雰囲気にハマりました。これ、オリジナルのPVもどことなくマッポー感のあるアニメでチョーかっこいいんです。
02. Theme From Dragon Dojo
ドラゴン・ドージョーにて― Spiros Kaloumenos ‘Groovelab’ ×「ローシ・ニンジャ」
序盤は135BPMくらいのハードテクノでビルドアップしていこうと考えていました。Spiros Kaloumenosはギリシャのプロデューサーで、00年代半ばから一貫してアッパーで使いやすいトラックをたくさん出しています。
今回、DJ用の曲を用意するにあたっては大きく3つのパターンを考えていて、
1) テクノと忍殺のシヨンなどの劇伴曲を合体させる(マッシュアップ)
2) 既存のテクノに、シヨンなどの声ネタをいい感じに混ぜる
3) あくまで忍殺をイメージした曲を加工なしでそのまま使う
これなんかは1のパターンですね。元の曲があまりコード感のないリズム主体のツールトラックなので、ドラゴン・ドージョーの曲とうまく混ざってくれました。センセイのインストラクション、ちょっとしんみりしちゃいます。
だからというわけでもないのですが、後半でゴブリン=サンが「豊満」を連呼して中和してくれています。そうだ、あと今回、原作リスペクトでいわゆる右(シリアス)と左(リラックス)の振れ幅を意図して選曲にも取り入れています。「豊満」って連呼されるとなんかいいですよね(そう?)。
03. Shi-FaFa
つまりこうだ、イグゾーション師父がファーファ― Homma Honganji ‘Wild Again’
いやあ、これをかけることができて楽しかったです。何といっても「イグゾーション師父=ファーファ」という意味の分からないミームの元凶である、ニコニコの元動画のおかげですね。ほんとどういう発想なの、これ!
本間本願寺さんは東京在住の世界的なテクノアーティストで、この日はノロワレ=サンも本間さんの曲をかけておられました。チャカポコしたトライバルな曲調と曲名がセキバハラ荒野を連想させるのと、そのなかで散ったイグゾーション=サンの妙な演説のテンションのおかしみがピッタリ合いました。
ファーファ(アメリカではSnuggle Bearと言うんだって)のぬいぐるみは、イベントの3日くらい前に思いついてAmazonで1200円で買いました。もうちょっと大きいサイズのほうがステージ映えしたかなと思いつつも、ニンジャ関係のグッズと言っていいのかも分からないのにそこまで追求してどうするのかという。
04. Chameshi Incident
チャメシ・インシデント― Joris Voorn ‘Incident’
ヨリス・ヴォーンの"Incident"は04年に爆発的にヒットしたアンセム。この曲からチャメシ・インシデントを連想してしまうのは、ニンジャヘッズなら仕方ないでしょう。ちょうどシヨンの「レイジ・アゲンスト・トーフ」で、コケシ労働者の男が声に出して発音してくれていたので、そこをサンプリングしました。
地味に工夫したのは、ビホルダー=サンが「マーベラス!」と言いながら拍手して出てくるシーンの音声と、曲中でクラップが入ってくるタイミングをぴったり合わせたことです。もともと拍手の音がセリフに被っていたので、そこも目立たずに曲に馴染むように微調整した。細かすぎて伝わらないよ!
05. ほとんど違法行為
ネコネコカワイイ― Hertz ‘Mankind 12 A’ ×「ほとんど違法行為」
この曲もマッシュアップですが、振り付けが分かる方には踊ってほしかったので、あくまでも原曲を重視した派手すぎないアレンジにしてみました。キー、速さ、展開どれも変えずに、縦ノリのハードミニマルになる感じに。
原曲に馴染むようにバランスを調整するのに苦労しました。展開によっても細かく変えていて、例えばダブステップ調になるところは原曲の低音を強調して、それ以外の箇所ではバックトラックのほうの低音が前に来るようにだとか。
Mankindは00年前後に精力的にリリースしていたスウェーデンのレーベルで、この曲を含めいくつかはデジタルでも出ているようです。私はこのへんはずっとレコードで買っていました。初期は特に名盤多いですよ。
06. Sushi-Soba Entry
スシ・ソバ エントリー― The Advent ‘Blimey’
「ズルズルーッ!」をクラブの大音量でかけてみたくて。ほんとに当日アンブッシュしたかったので、他の曲はTwitterで制作状況を小出しにしていましたが、このネタは伏せていました。ネコカワのあとにカットインでバーンと突っ込んだ。ウケていたみたいでよかったです。
The Adventは90年代から活躍するベテランのアーティストです(今はシスコ・フェレイラのソロ・プロジェクト)。この曲は、テクノの売れ線がミニマル~テックハウスに過剰に寄っていた00年代後半に突如として現れた、原初的なハードテクノの魅力を持つトラックで、スピーカーを音圧で殺すという男気を感じます。
07. Nancy Starlight
ナンシー・リーのテーマ― Desiderio ‘Starlight (Ferry Corsten Remix)’
ここから2曲、キャッチーな歌もののトランスです。もともとトランスは大好きなので久しぶりにかけたくて、いくつかの候補の中から、ナンシー=サンのイメージに合うこの曲にしました。
ナンシー=サンの名台詞を集めてブレイクのところで使っています。ヴォーカルの声質が若干ナンシー=サンに近いこともあってか、うまくエモーショナルな流れの中にハマってくれました。
08. Spread Your Wings
ナンシーとユンコのテーマ― System F ‘Spread Your Wings’
この曲だけ、声ネタを足したりという編集は何もせずに原曲のまま使っています。本当はユンコちゃんの声があれば使いたいところだった!ナンシー=サンによるハッカー修行のイメージで、明るく未来を予感させるアッパーな曲を選びました(歌詞もイメージにぴったり)。この曲以外だったら、Mothers Pride "Learning to Fly (Moonman Remix)"とかでも良かったかも。
この曲や前の曲のような00年前後のトランスが気になる方は、System F(フェリー・コーステン)のベストアルバムが手に入りやすいので、入門盤としておすすめです。
09. Swan Song
ヤモト・コキとシルバーカラス― A.Paul ‘Tainted’ ×「クロウ・フライズ・アウェイ」
この曲、シンプルだけど今回作ったマッシュアップのなかで一番のお気に入りかもしれません。サンプリングしながら、またオーディオドラマ版の「スワン・ソング・サング・バイ・ア・フェイデッド・クロウ」を通して聴いてしまって、感極まったりしていました。ヤモト=サンとシルバーカラス=サンがアイサツ交わすところ、たまらなくいいですよね。
そしてまた、一番盛り上がるところにヤモッチャンのカラテ・シャウトを重ねてみました。いいでしょう、ここ!当日もフロアから反応が聞こえてきて嬉しかったです。
ちなみにこの原曲、書籍特典版のサウンドトラックでは曲名が「スワンソング」なのに、シヨンBD特典のサントラでは「クロウ・フライズ・アウェイ」に改題されていますね。ここでは後者の音源を使っています。
10. Flash Battle
ニンジャの戦い― Michael Burkat ‘Without A Trace’ × ‘The Savage / Signless’
シヨンのフラッシュバトルのBGMがせっかくミニマルなテクノなので、それを生かした曲を作ってみました。Michael Burkatは、Lars Kleinらとともに00年代初期から一貫してダークで重いテクノを作っているアーティストです。
戦端を開き、一瞬で散っていったのはシヨン16話のプロミネンス=サン。めちゃくちゃ爽やかな「サヨナラー!」が何度聞いても笑える。中盤、Signlessのブレイクの「ウー」というのをソニックブーム=サンの「エエッ?」に差し替えたのをやってみたくて、遊んだりしています。ソニキの美声、フロアで聞いてみてどうでした?
後半は、アゴニィ=サンが喘いでくれました。尺に余裕があればもっと1、2分これだけ延々とかけて帰っパされたかった。
11. Last Battle
決戦 ラオモト・カン― Dito Masats ‘Buena Verde’ ×「ニンジャ・シャル・ペリッシュ」
一連のマッシュアップの中で、最初に作ったのがこれ。ニンジャ万博・ザ・ファイナルのときにも会場BGMとして提出した中に入っていて、午前中に3回くらい会場で流れていたと思います。今回は、それからさらにミックスのバランスを見直した最終版です。
この曲「ナラク・ウィズイン」のアレンジですが、大好きなバージョンです。ちょっとロマサガとかの伊藤賢治さん風のバトルBGMっぽくもあり。シヨンの中でも、24話のラオモト戦でニンジャスレイヤーの初めの覚醒シーンに使われていましたね。
イヤグワはニンジャスレイヤーに欠かせない要素なので、どうしても曲に取り入れたいと思っていました。が、シヨンもオーディオドラマも、カラテが高まるシーンはどれもバックに劇伴が流れていて、セリフだけをうまく抜き出してサンプリングすることができないんですよね…。このラオモト=サンとのイヤグワは、最終26話のラストの殴り合いのシーンから取ってきました。ほんとに使えるのはココだけだった。
それと、クラブでかけるにあたり、スピーカーの左右からイヤグワが行ったり来たりすると面白いかなと思って、そのようにしてみました。どう聞こえたかなあ。
12. Ninja Suxx
ニンジャが好きだなあ― O.B.I. ‘Life Suxx’
映画『アキラ』ネタのシュランツ(Bassbottle "Akira (Mechanical Brothers Remix)")みたいなことがやってみたくて作りました。完全にニューロンをやられた重篤ヘッズっぽい曲にしたかった。この原曲は私の大好きな曲で、レコードでしか出ていないのですが、自前でデータに録音したものを使っています。
冒頭でカニボタンを300BPMで連打するのはオリガミ部のオカヨちゃん。5人のなかで一番太めの子だよ。原作通り、無印でもシヨンでもこの子が「じゃあ私も!」ってしてます。
フユコとトチノキの例の回想のくだりは、私も作っていて心が痛みました…。でも、当日フロアから「ヤメロー!ヤメロー!」という声が聞こえて、いやー作ってよかったなあと思いましたね。そのあとの、オフェンダー=サンが静止するところもいい感じにできたと思います。